「ドーピングの現状とオリンピックムーブメント」

【勉強会報告】
いよいよ東京五輪を来年に控えて、e-ラーニングにて「ドーピングの現状とオリンピックムーブメント」について受講しました。
ジャマイカ選手のドーピング違反による失格から、昨年12月に 2008年北京五輪陸上男子400mリレーにおける日本チームの銀メダル昇格が決定しました。
「日本の選手から五輪で薬物使用の陽性反応が出たことは一度もない」(フェンシング 太田雄貴氏)ことが2020年東京五輪決定の一因だったと考えられている一方、2018年平昌五輪でショートトラックの日本代表選手がドーピング検査で陽性となったり、カヤックの日本の選手が他選手のドリンクに禁止物質を混入させた事件が同年1月に発覚したりと、意図的なものから「うっかりドーピング」まで、現在要注意の状態です。

●ドーピングの起源
語源:アフリカ南部原住民が祭礼・戦時等に飲む強い酒「dop」
→「興奮させる飲み物」「麻薬」等の意味で用いられるように
→「薬物を使用すること」=「ドーピング」という意味になった

●現在の「ドーピング」とは
・スポーツ選手の競技能力を高めることを目的として不正に薬物を摂取すること

●ドーピングの歴史概要
19世紀後半:競走馬にヘロイン・コカイン・カフェイン等を投与
1886年:アムステルダム運河水泳でのオランダ選手の覚せい剤使用
1960年:ローマ五輪で自転車選手がアンフェタミン乱用でレース後死亡
1968年:グルノーブル及びメキシコ五輪でドーピング検査実施(競走馬は1911年に先行)
1972年:ミュンヘン五輪で競泳選手がドーピング陽性(喘息治療:エフェドリン)で金メダル剥奪

●ドーピングの効果例
陸上女子100m世界ランキング1位の記録変遷(1970年代半ば~2012年)
・1988年のジョイナーの記録が突出
・蛋白同化ステロイドの使用で永久追放になったマリオン・ジョーンズの1990年代後半の記録がそれに次ぐレベル

●日本におけるドーピング検査
・1985年の神戸ユニバーシアードが契機となり、国内初のドーピング検査機関設置
(前年のロサンゼルス五輪で男子バレーボール選手が風邪薬として服用した漢方薬に禁止薬物成分含有、薬剤手配したトレーナーが処分された)
・2001年:アンチドーピング機構(JADA)創立(世界アンチドーピング機構=WADAは1999年)
・2002年~:箱根駅伝で実施
・2009年~:インターハイで実施
・2010年~:東京マラソンで一部の市民ランナーにも実施
※国内のドーピング検査(2005~2016年)での陽性率は0.08~0.22%と他国より有意に低い

●ドーピングの定義:禁止薬物の使用だけがドーピング違反なのではない
<10のアンチドーピング規則違反>
採取した尿や血液に禁止物質が存在すること
禁止物質・禁止方法の使用または使用を企てること
ドーピング検査を拒否または避けること
ドーピング・コントロールを妨害または妨害しようとすること
居場所情報関連の義務を果たさないこと
正当な理由なく禁止物質・禁止方法を持っていること
禁止物質・禁止方法を不正に取引し、入手しようとすること
アスリートに関して禁止物質・禁止方法を使用または使用を企てること
アンチ・ドーピング規則違反を手伝い、促し、共謀し、関与すること
アンチ・ドーピング規則違反に関与していた人とスポーツの場で関係を持つこと

●禁止物質について
・ドーピング防止規定や禁止物質は毎年1月1日に変更される
WADA禁止表(使用禁止薬物、2018年)
<Ⅰ:常に禁止される物質と方法(競技会時及び競技会外)>
[禁止物質]
S0:無承認物質(臨床開発中の薬・デザイナードラッグ等)
S1:蛋白同化薬(筋肉増強作用)←違反が疑われる分析報告のうち約半数がこれ!
S2:ペプチドホルモン、成長因子及び関連物質(エリスロポエチン、成長ホルモン、インスリン、鹿茸等)
S3:β2作用薬(中枢神経興奮作用・蛋白同化作用/吸入サルブタモール、吸入ホルモテロール、吸入サルメテロールは用法用量を守り使用する限りは禁止されず、TUEも不要)
S4:ホルモン調節薬及び代謝調節薬(アロマターゼ阻害薬・選択的エストロゲン受容体調節薬(SERMs))
S5:利尿薬と他の隠蔽薬(禁止薬物の排泄を低下させる、尿検体中の禁止薬物を隠蔽する、血液パラメータを変化させる物質 等)
[禁止方法]
M1:血液および血液成分の操作(血液ドーピング・酸素供給を人為的に促進すること(酸素事態の補給は除く))
M2:化学的および物理的操作(尿検体のすり替え、12時間あたりで100mLを超える点滴)
M3:遺伝子ドーピング(核酸のポリマーまたは核酸類似物質の使用、正常なあるいは遺伝子を修飾した細胞の活用 等)
<Ⅱ:競技会検査で禁止される物質と方法>Ⅰに加えて…
[禁止物質]
S6:興奮薬
a 特定物質でない興奮薬(メタンフェタミン)、b 特定物質である興奮薬(エフェドリン)
S7:麻薬(ヘロイン、モルヒネ、フェンタニル等)
S8:カンナビノイド(大麻に含まれる生理活性物質および合成カンナビノイド)
S9:糖質コルチコイド(局部はOKだが、全身的治療は全て禁止、治療のためにはTUE必要)
Ⅲ 特定競技において禁止される物質
P1:β遮断薬(アーチェリー、自動車、ビリヤード、ダーツ、ゴルフ、射撃、スキー/スノーボード 等)
静穏作用のため選手の不安解消や「あがり」の防止、心拍数と血圧の低下作用で心身の動揺を少なくする。集中力が重要な競技において禁止されている。

特定物質:医薬品として広く市販されているために不注意でドーピング違反を起こしやすい物質、あるいはドーピング物質として乱用されることが少ないと思われる物質
→特定物質でのドーピング違反の場合、競技能力向上を目的としたものでないことを競技者が証明できれば、制裁措置が軽くなることがある。

監視物質:WADAが監視必要と位置づけ。当該年における禁止物質ではないが、監視の結果乱用が認められれば禁止物質へと移行する場合がある。
ex.)メルドニウム(持久力向上作用):2015年まで監視物質→2016年から禁止物質へ
※これによりシャラポワはリオ五輪に出場できず

●TUE(治療使用特例)
・スポーツ選手がケガや病気の治療をする際、禁止薬を治療目的に使う許可を得るためにJADAへ「TUE申請」を行い、承認を得る必要がある。選手が書類を入手し、医師が記載する。

●のど飴の話題
・浅田飴:エフェドリン含有→以前から禁止物質として指定されている
・南天のど飴:ヒゲナミン(気管拡張、鎮咳効果:2017年~禁止物質へ)
・龍角散ののどすっきり飴:ヒゲナミン含有せず
ヒゲナミンは、麻黄附子細辛湯、小青竜湯、八味地黄丸、呉茱萸湯、温経湯 等や、米国製サプリメント、アサヒビール特許の健康食品(脂肪分解促進剤)にも含まれている。

●最新の競技別・国別違反件数(WADA,2016年)
競技別 1位:陸上、2位:ボディビルディング
国別 1位:イタリア(ダントツ!)

●ドーピング違反の主な内容
・故意のドーピング
※以下「うっかりドーピング」
・TUE(Therapeutic Use Exemptions:治療使用特例)申請の不備
・ネットで個人購入した医薬品・サプリメントに違反物質が含まれていた
・競技選手だと言わずに受診し(以前服用した風邪薬の処方を希望して)、その処方薬に禁止物質が含まれていた
・市販薬を購入し服用した

国内のドーピング陽性報告のうち40%以上がうっかりドーピング!
ex.)育毛剤、花粉症治療薬でのベタメタゾン、貧血治療で投与されたエリスロポエチン 等

感想:エフェドリン入りの風邪薬を服用したシドニー五輪の女子体操選手が 金メダル剥奪となったことが、個人的には今でも印象に残っています。
そして、日本の選手の場合、ドーピング陽性率は他国より有意に低いものの、うっかりドーピングの割合が高いことから、選手本人はもちろん、監督・コーチや医師・薬剤師等サポートメンバーも最新の情報・知識を得ての協力体制が必要だと感じました。

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